例えば、「花」というテーマで作文を書くとします。
作文となれば「花」について、様々な体験を交えて、楽しかったこと、悲しかったことなどを生き生きとした表現、情緒豊かな言葉遣い 等々を駆使しながら書くことになります。そして、作文は文章力によって、出来不出来が左右されます。

以下に、作文の例を掲載します。

「花」(作文の例)

 花と聞くと祖母を思い出す。祖母は花がとても好きで、家の庭には、牡丹(ぼたん)、椿(つばき)、菊、菫(すみれ)、葉牡丹(はぼたん)など多種多様の花々を咲かせていたことを憶えている。機会があれば、花の苗を手に入れてきて、心を込めて育てていた。花に話しかけるようにして、適度な水と肥料を与えていた。やはり、花も主人の心がわかるのであろう。祖母の可愛がっていた花は、実にきれいに咲き乱れていた。年をとっても祖母が前向きに、明るく生きていたのは、花を一つの生きがいにしていたからかもしれない。生き生きとした顔をして花の話をしてくれた祖母は、聞いている方の気持ちも清清しいものにしてくれた。
 祖母は旅行が好きで、国内は勿論、ヨーロッパ、アメリカなど海外にもよく出かけ、旅行仲間と一緒に旅を楽しんでいた。社交的な祖母は、現地で出会った人ともすぐに仲良くなり、一緒に写真を撮ってもらい、これは誰々だよと説明してくれた。旅行先では、必ず、花がたくさんある場所に立ち寄っていた。熱帯の花の植物園、様々な種類の百合ばかりを集めた植物園など各地の植物園を見て回るのを楽しみにしていた。十五年前、ギリシアに旅行に行ったときには、日本では見たこともないようなシクラメンがあったと言って、目を輝かせながらその写真を見せてくれたことを昨日のことのように憶えている。
 梅の季節になると、家族で月ヶ瀬という梅の名所に出かけることを毎年の行事のようにしていた。車で二時間ほどかかるのであるが、車中は梅の話題を祖母が提供し て、梅を見る楽しみを倍増してくれた。梅の街道をくぐり抜けると茶店があり、梅を見ながら飲む一杯の抹茶は、心に深い潤いを与えてくれた。
 今はこの世にいない祖母であるが、私の心の中には、祖母は花として今でも生き続けている。
(了)
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 ところが、同じ「花」というテーマが与えられても、小論文となると、作文とはまるで違ったものになります。
 小論文はで自分で論じる視点を考え、結論を明確にして書かなければなりません。ここでは、自分の体験は書いてもよいのですが、あくまでそれは、結論に説得力を持たせ、根拠づける具体例という位置づけでなければなりません。
 以下の例は、「現代社会における花の意義」という視点で書いたものです。
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「花」(小論文の例)

 花鳥(かちょう)風月(ふうげつ)や百花(ひゃっか)繚乱(りょうらん)という「花」のついた熟語は、自然の美しさを表している。花は、自然美の象徴である。人々は、花から明日への活力をもらう。また、花は人々を深く結びつける力を持っている。
 日常生活には、様々なストレスが存在する。職場での人間関係、家庭での嫁と姑の関係、学校での友達関係などである。ストレスをかかえたまま生活すると、精神的にも肉体的にも疲れがたまってしまう。また日常生活は、単調で、毎日同じことの繰り返しが多いので、感動することが少なくなりがちである。このような日常生活に、花は潤いと癒しを与えてくれる。花束が贈られることにより人の心が潤い、子どもから一輪のカーネーションをもらうことにより母親は日頃の生活の疲れが癒される。普段通る道に何気なく咲いているタンポポの花を見ると、心が和み、ストレスも吹き飛ばされる。
 日本人にとって、桜は特別の花である。花見の季節になると、桜の花の下で、親し い人間同士が食べたり飲んだりする。桜の花が咲き乱れる中での飲食は、普段の生活では味わえない爽快感をもたらす。しかし、いくら桜がきれいだからといって、一人だけではおいしい料理も味気なくなってしまう。気心の知れた仲間や家族と一緒であ ればこそ、味わうことができるものである。普段と同じスーパーマーケットで買ってきた肉や野菜であったとしても、桜の木の下でのバーベキューは格別の美味である。花は、人々を結束し、さわやかさを与える。
 近代以降、合理性、論理性、実証性を探求し、科学・技術が急速に発達した。その結果、生活が便利になり、物質が満ちあふれるようになった。しかし、それだけで人々は心が満足できるわけではない。心の豊かさを与えてくれる花は、現代社会において一層重要な役割を果たしている。
(了)

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 一見すると、作文よりも小論文の方が難しいように思われますが、実は正しい訓練 さえ積めば、小論文の方が簡単に書けるようになるはずです。作文は、センス・才能によってでき具合が左右されますが、小論文は訓練さえつめば何とかなります。

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